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執筆者の写真Norio Tomita

発達障害と成長

「発達障害の子どもも(もちろん)成長をする」


これは、私が大学時代に最も感銘を受けた先生の1人である滝川一廣先生(2018年学習院大学を定年退官)が教えてくださったことです。「発達障害の子どもも成長する。ただそのスピードが他の子と比べ遅いだけだ」と。私はこれまでこの言葉を大事にしながら子どもの臨床に望んできました。治療者は、相手の成長や回復を信じて接することが重要です。でも彼らの中には、最初のうちは成長や問題解決がなかなか進まないと見えてしまう子も少なくない。


でも実はそれは「成長していない」わけではなく、よく見るとやはり成長していたのです。ただその成長が「新しいリスク」になっていると。それが結果的に「良くなっていない」と見えているだけだと気が付きました。


例えば人との関わりがほとんどなかった発達障害の子どもさんが、急に友だちに関わるようになり、最終的に相手に怪我させてしまったみたいなことがあったります。ある人は「やはりこの子は発達障害だ」と確信したのですが、私は「ああ、この子は今まさに人間関係を始めたのだな」と思う。つまり自分以外の「人がいる」ことに気が付き、関心を示すようになったのです。でもどうしていいかわからない。とりあえず押してみた。相手は困るのですが、本人にとってはすごく生き生きとした体験となった。そしてそれがやめられなくなったわけです。


これは障害という見方だけでなく成長の要素もあることなので、ただやめさせて終わりではなく、その次の成長につなげていくことが重要です。つまり人によってはそのやり方では嫌がる人がいるから、ちがうやり方をその子が知らなきゃいけないってこと。こうした意味でも専門家による治療や療育、家族支援が必要なわけなのです。


特に家族支援は、繰り返される子どもさんの問題を前に、家族も自信を失ってますから、困り果てた末に落ち込みが強くなったり、子どもさんを叱るしかないようになる。発達障害の子どもさんの自尊心の問題は割と有名ですが、家族の自尊心も傷ついています。それをケアしつつ、長い目で希望を失わないこと、将来の成長のためにできることは何かと話し合っていくことが重要だと思います。


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