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執筆者の写真Norio Tomita

映画の紹介④ 「ラッキー」

「ハリー・ディーン・スタントン」という俳優が90歳の時に主演をした映画。

この俳優さんは、アメリカでは有名なバイプレイヤーで、若い頃から俳優として活動を始め、90歳になるまでに実に200作品以上の映画に出演したという経歴を持つ方です。


この『ラッキー』という映画は、テーマが「老いと死」という人生の終着を扱った作品。90歳の割に健康で、一人暮らしの生活を送っていた老人「ラッキー」が、ある日急に倒れたことをきっかけに、自分の死について考えるようになる。


最初は不安や恐れを感じた主人公だが、そこにどう向き合っていくのかというのがこの作品のあらすじです。一見すると非常に重苦しく難しいテーマなのですが、この映画を見ていると、それはある種の「美しさ」に収斂されていく印象がある。


90歳のおじいちゃんを見ていて「美しい」とはあまりイメージがつかないと思いますが、それはそれで実際映画を見ていただくとわかることだと思います。


この映画、実はこの主演をした「ハリー・ディーン・スタントン」さんのために、彼の映画仲間が企画して作った作品ということで、その脚本を作るにあたって、事前にハリーさん自身の人生について本人からの綿密なインタビューが行われたということでした。


そしてその内容が作品の中に出てくるシーンやセリフにも多く反映されていて、例えば後半の退役軍人との話し合いに出てくる、沖縄戦の集団自決に関する回想シーンは、ハリーさん自身の体験談だったそうです。


さて、最後にこの作品の「美しさ」について触れたいと思います。それはこの主人公が、自分の死について受け入れていく過程において、「人々との話し合い」を重ねることでその基盤が作られていくことと、またその心の整理にあたって、ある「歌」が象徴的に用いられているとことです。90歳の割に素敵な歌声を披露し、この作品において非常に印象的なシーンとなっています。


実はこの作品が公開された半年後に、「ハリー・ディーン・スタントン」さんは実際に亡くなってしまいます(病死ではなく自然死)。その事実とも合わせ、最後のシーンで見せる彼の笑顔の意味(その理由をクライマックスで本人が語りますが、ネタバレになるのでここでは控えます)が印象として残る映画でした。


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