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執筆者の写真Norio Tomita

3分で名著《ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」》(100分de名著より)

出ましたドストエフスキー!。名前を知っている人は多いでしょうが、本を読んだことがある人は少ないのではないでしょうか。彼の本は非常に分厚く難解であることで有名ですね。そうした本が「100分de名著」で扱ってもらえることは、理解の入り口として非常に助かることですね。


紹介者は、以前に同じくドストエフスキーの「罪と罰」を紹介された、著名なドストエフスキー研究者の一人、亀山郁夫先生。このブログでも、以前彼の動画を紹介しました。


ドストエフスキーにも興味がありますが、私的には亀山先生にも非常に興味を持っています。それは先生が自分の人生にも触れながら、ドストエフスキーを魅力を紹介されるからです。このスタイルに何だか私は引き込まれてしまいます。


この本でまず先生は、自分自身も父親と大きな葛藤があったことを告白されます。そしてこの本に最初に触れた思春期に、自分の違和感と同じ思いを持った人が他にもいた事を知って非常に救われたともおっしゃいます。思春期の子どもたちの中には、「自分だけがみんなとちがう考え持っているのではないか」と考え、孤独感を抱え苦しむことがありますが、先生のように文学によって救われた人も少なくないのだと思います。


さて、この「カラマーゾフの兄弟」の大きなテーマは『父親殺し』。後にフロイトがこの本を引用しながら、自らのエディプスコンプレックス(これも父親殺しのテーマ)の考えを説明したことは有名です。


それぞれの登場人物(父親、3人の兄弟、料理人など)は、それぞれちがった考え方を持ち、偏った人生を歩んでいる。


はじめはその違いがいがみ合いの原因にもなるのだけども、やがてその意見の違いが良い意味でも悪い意味でもお互いに影響を及ぼしてゆき、人生の危機をスパイスにしながら、それぞれの人物の心の変化が訪れていく。そうした小説のようです。


ドストエフスキーが亡くなったのは1881年。この後1917年にロシアでは革命が起こり、帝政が崩壊して共産主義の国家に変わっていきますが、ドストエフスキーが生きた時代のロシアは周囲のヨーロッパ諸国が民主化を進め資本主義を推し進めていく傍らで、1000年続いた帝国主義が行き詰まり、民衆の不満が様々な形で渦巻く時代だったようです。そうした中で偏ったいくつかの思想が生まれ、我こそが最も正しい主張だと考える人たちも増えていって人々はぶつかり合う。しかしこの兄弟は、そうした発想の生々しいぶつけ合いを通じ、それぞれの心が変わってもいった。またその中では、自分の本当の感情や矛盾に向き合い、それは時に父親に対する激しい敵意でさえも認め受け入れてゆくことだったりする。そんななかなか奥の深い物語なのでした。


みなさんはこの本に関してどのような感想を持たれるでしょう?。まずはこの「100分de名著」から手に取ってみてはいかがでしょうか。



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