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執筆者の写真Norio Tomita

3分で名著《カフカ「変身」》(100分de名著より)

この本はアルベール・カミュの「ペスト」とともに”不条理文学”の一つとも言われることがあるそうです。


会社に行きたくない主人公がある朝突然虫になっている。そんな荒唐無稽な物語。


それだけでも興味深くて飛びつきたくなるわけですが、これは”不条理”な話なので、その後の展開はすっきりするような話ではないわけです。ネタバレですが、最終的に主人公は家族から疎まれ死んでしまう。そういう救われない物語なのです。しかしそうした中にもところどころ、責任や重圧から解放された主人公が生き生きと思うまま壁や天井をかけずりまわるるような描写があるそうな。


社会の中で生きるとは何か?と考えさせられる小説かもしれません。


ところで作者のフランツ・カフカは1900年初頭をチェコの首都プラハで生きたユダヤ人。日中はまじめに事務仕事をこなす生活の一方で、夜な夜な好きな小説を書く生活を送っていた。また彼は父親との間で、努力を認めてもらえないという大きな葛藤を抱えていて、そうした背景が作品にも影響していると講師の川島隆先生は説明されています。


テキストの表紙にも書かれているように、「確かな場所は、どこにもない」「絶望に出口はない。あなたは進むか、留まるかー」とありますが、川島先生の解説の興味深い点は、「変身」のみならず後半にカフカの後期作品である「城」を紹介されている点。


その「城」では、なかなか目的地の「城」にたどり着けない、存在意義があいまいな主人公が、「しつこくしつこくそこに居続ける」という物語が展開されるそうです。「変身」(逃げて自由になる)と「城」(意味はわからづとも居続ける)の比較によって、カフカが困難にあえぐ我々現代人にも何か伝えてくれるものがあるのではないか。そんなカフカ作品の現代的意義を先生は紹介されていました。


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